新生讃美歌504「まごころもて」
詞:レイ・パーマー、曲:ロウエル・メーソン
1830年、22才の青年のレイ・パーマーは神学を学ぶ傍ら、ニューヨークの私立女子高で教えていたが、1年間病気と孤独との闘いに明け暮れ、沈み込んでいた。或る夜、十字架の前にひれ伏す貧しい罪人を描いたドイツ語の詩を読んでひどく感動し、英語に訳し、4節から成る英語の詩を加えた。それが「まごころもて」である。
「この歌は、何の苦労もなく私の魂から溢れ出た。とても素直な気持ちだった。他人に見せるとか、まして礼拝で歌う賛美歌を作るなどの気持ちは、全く無かった。最後の行“Shall o’er me roll, Blest Savior, then in love, Fear and distrust remove; O bear me safe above, A ransomed soul!” (贖われし我が霊を安けく天に携え上げ給え) と書いた時、贖いと救いの全てがこの中に含まれ、永遠の賛美の主題が歌われていると感じ、とめどなく涙が溢れた」とパーマーは後に述懐している。
この歌はそのままパーマーのポケットに眠っていたが、2年後の1832年、作曲家ロウエル・メーソンから「何か良い歌詞はないかね」と聞かれたパーマーは、ポケットからこの詩を取り出した。メーソンも無雑作に受け取った。ところが、2〜3日後再び会うや否や、メーソンは興奮してパーマーにこう言った。
「パーマー君、君はこれから長生きし、大きな事を沢山するだろうが、私の考えでは君は後世に、『まごころもて』の作詞者として名を遺すに違いない。」
その言葉通り、この歌は礼拝や主の晩餐の歌としてアメリカ3大賛美歌に数えられている。
(山中猛士 1931-2018)