イースターの賛美歌「キリストはよみがえられて、今生きておられる」

新生讃美歌 240番「救いの主はハレルヤ」

この賛美歌 “Surrexit Christus hodie” の作者は不明ですが、14世紀につくられたラテン語の賛美歌で、その原型には、出典により異なるさまざまな節があります。これはイースターのミサの最後に歌われた “Benedicamus Domino” のトローブ スであったものと言われます。さまざまなドイツ語訳と英語訳が記録されています。英語訳の “Jesus Christ is Risen Today” は、3節あり、最初は1708年ジョン・ウォルシュ(John Walsh)によりロンドンでLyra Davidicaに出版されました。

チャールズ・ウェスレー(Charles Wesley)はドクソロジ-(頌栄)として4節を加えました。そして後に1739年、劇的な回心の体験の翌年、自分の詩で11節よりなる “Christ the Lord is Risen Today” を作りました。そのチャールズ・ウェスレ-の詩は、“Surrexit Christus hodie” とよく間違われます。主題が同じで、構造が類似しているからです。両方の歌詞の内容はとても良く似ていて、日本語訳は翻訳というよりは全体を通しての訳なので、日本語訳はどちらの歌詞にも適用できるのです。

『讃美歌21』は、「救いの主はよみがえりたもう」を「キリスト・イエスはよみがえられた」に変更しましたが、新生讃美歌委員会は長年親しまれた1954年版『讃美歌』(日本キリスト教団出版局)の歌詞を選びました。

このうれしい「アレルヤ」は14世紀の原歌詞にあったものと考えられますが、EASTER HYMNのメロディーと組み合わせるときに英語の歌詞を「ハレ、ハレルヤ」に変えられたと考えられています。ドイツ語の原歌詞は「アレ、アレルヤ」でした。現在、英語の賛美歌集は「アレルヤ」を使っています。「アレルヤ」はチャールズ・ウェスレーの原歌詞にはなかったのですが、その詞と曲の組み合わせの過程で付け加えられたという記録があります。

翻訳にあって最も困難なことは、ラテン語の原歌詞、ドイツ語、英語のどの歌詞の場合も “is risen” の言葉が現在完了形で、完了した動作が継続していることをあらわし、「よみがえられた」という過去のできごとではなく、「今も、よみがえられ続けておられる」という言葉の性質です。このことはわたしたちにとってキリストの復活の最も大切な部分です。2000年前に死から命へと復活されたことを、これらの賛美歌がつくられた14世紀と18世紀の人々は「キリストはよみがえられたまま、今もおられる」と証言したかったのです。わたしたちも「キリストはよみがえられて、今生きておられる」と歌うことができます。しかしながら、ラテン語からドイツ語、英語、日本語の翻訳の困難性と限界、および、歴史の流れと変遷の中で考えると、この訳文は美しく表現豊かに「イースター」を祝うハレルヤ賛美歌と言えます。

曲のEASTER HYMNは “Surrexit Christus hodie” の英語訳、“Jesus Christ is Risen Today” に付けられて、一緒にLyra Davidicaに載ったものが最初です。各行は「ハレ、ハレルヤ」で終わっています。 後に、イギリスやアメリカの賛美歌集に載ると、多くのさまざまな変更がなされ、多くの人びとに親しまれるようになり、イースターの賛美歌としては最も好まれ、このEASTER HYMN という曲名が付されるようになりました。ジョン・ウェスレーとチャールズ・ウェスレ-は多くの歌詞にさまざまな形でこの曲を用いました。

ジョン・ウェスレーは、1742年出版のFoundery Tune Book にこの14世紀の賛美歌の替わりに、チャールズ・ウェスレ-の “Christ the Lord is Risen Today” を用いました。それ以来、EASTER HYMNは世界中の賛美歌集でチャールズ・ウェスレーの歌詞と組み合わされ、おそらく14世紀の歌詞よりも多く用いられています。それと同じように14世紀の歌詞が、多数の他の曲に組みあわされて歌われています。この曲は他のいくつかの曲名でも知られ、THE RESURRECTION(原題)、SALISBURY(ウェスレーの曲名)、EASTER MORN、 WORGANなどがあります。

興味深いことにこの賛美歌はイエス・キリストのよみがえりよりも、キリストの死に関して語っています。両方とも神の贖いの業を語る時に欠かせないものです。キリストは十字架を耐え忍び、神はイエスを死より甦らせました。(ローマ10:9)

キリストの死とよみがえりは切り離すことができません。賛美歌はこの偉大な事実を語ります。

(大井バプテスト教会 故 大谷レニ― 2005)

240 救いの主はハレルヤ

最近の記事
  1. 福音歌手シェーの証しと共に広まった賛美歌「キリストには替えられません」

  2. キリストにある希望を受けて

  3. キリストを歌った100節からなる長詩が歌となって 詞:キャサリン・ハンキー

  4. 「主はわたしのために、いのちを与えてくださいました。」(原詞:わたしはあなたにいのちを与えました。)との主からの呼びかけに応えて

  5. 『アンクル・トムの小屋』で著名なストウによる創作詞とメンデルスゾーンの曲で愛唱されている「朝風しずかに吹きて」

  6. 試練の中にあって書かれた賛美歌、神による平安を歌う

  7. 礼拝歌としてアメリカ3大賛美歌に数えられ愛唱されている賛美歌「まごころもて」 詞: レイ・パーマー

  8. クリスマス(待降節)はアドベント賛美歌から始まります

  9. 世界中で歌われているクリスマス賛美歌

  10. 「平和をあたえませ」と節ごとに歌う

記事一覧を表示するには、カスタム投稿「賛美歌解説」にて、4つ以上記事を作成してください。

オーディオプレイヤー
投稿が見つかりませんでした。

収録曲一覧カテゴリー

TOP