新生讃美歌149,150 来たれやインマヌエル
賛美歌「来たれやインマヌエル」はメシア到来の希望と驚きを語ります。「見よ、おとめが身ごもって、男の子を産み、その名をインマヌエルと呼ぶ」(イザヤ書7章14節)。これは、見えないものについての信仰と期待を歌う賛美歌です。「信仰とは、望んでいる事柄を確信し、見えない事実を確認することです」(ヘブライ人への手紙11章1節)。見えないものを信じるには確固たる信仰が必要です。
特降節(クリスマス日前の4回の日曜日)は、キリストの降臨を期待して準備する期間です。預言者たちは、4世紀もの長きにわたって、メシアが現れてユダヤの民を数ってくれると預言してきました。ヘブライ人への手紙11章には、私たちの祖先が、メシアの到来を信じて、どのように信仰を貫いてきたかの記録が示されています。彼らは、キリストの降臨を400年間も信じ、待ち望み、次世代へと語り継いでいきました。私たちにはキリストの降誕を記録した新約聖書があります。キリストの降臨が実現した今、私たちはキリストの再臨を信じて、クリスマスの前に待降節をお祝いします。しかし、私たちは、メシアの到来を預言した旧約聖書しか読んでいなかったとしたら、それでもメシアの到来を信じ続けることができたでしょうか?クリスマスにイエスが降臨されることを信じて期待し続けるには、尋常ではない強い信仰が必要だったことでしょう。現在でも、イエスはメシアではない。だからまだメシアの到来を待ち続けていると教える宗教もあります。新約聖書のマタイによる福音書1章23節に、天使がヨセフに現われて、生まれてくる男の子はインマヌエル(「神は我々と共におられる」という意味)と呼ばれるとのイザヤ書7章14節を引用する箇所があります。また、マタイによる福音書16章16節には、「あなたはメシア、生ける神の子です」と答えたペテロの証が記されています。
プレインソング(単旋聖歌)の調べで歌われるこのラテン話の賛美歌「Veni, Veni Emmanuel (来たれやインマヌエル)」は8世紀頃に作詞されました。1455年にグーテンベルグが印刷機を発明し、ラテン語のダーテンベルグ聖書が世界で最初の印刷物となりました。世界で最初の英語の聖書は、1380年代にジョーン・ウィクリフが手書きしたものです。歴史書によれば、完全な日本話の聖書ができたのは19世紀になってからです。ですから、この賛美歌が作詞されたのは、それらよりももっと前、キリストの降臨から700年ぐらいしか経っていない頃でした。
この賛美歌は、元々は「O antiphons」と呼ばれ、7つのアンティフォナ(応答頌歌)から構成されていました。当時は、12月17~23日の間、Magnificat at Vespers(晩歌のマニフィカート)として毎日一つの交唱歌が歌われました。それぞれの交唱歌は、驚きと戸惑いを表す「O」と、それに続く旧約聖書中のキリストの呼び名で始まります。
- O Sapienta
- O Adonai
- O radix Jesse
- O clavis David
- O Oriens
- O Rex gentium
- O Emmanuel
面白いことがあります。これらの7つのキリストの呼び名の最初の文字を最後の節から逆に順番に並べると「ERO CRAS」になるというのです。これは、ラテン語で「明日私は来る」という意味で、キリストの降臨をアナウンスするのにふさわしい言葉です。この賛美歌は旧約聖書に出てくるキリストの5つの名前に基づいていて、「インマヌエル」で第1節が始まり、「くりかえし」でも繰り返されてキリストの降臨を喜び告げ知らせます。第2節以降は次のとおりです。2.エッサイより、3.あけぼのの光、4.ダビデの子、5.アドナイの主。この賛美歌を「喜べ インマヌエル、主は来たりたもう」と歌うことは私たちの信仰の証です。
「インマヌエル!神は我々と共におられる」(マタイによる福音書1章23節)。
大谷レニー(翻訳:宇賀治潔) 2013年9月