新生讃美歌515 静けき河の岸辺を
詞:ホレイショ・スパッフォード
静けき河の岸辺を
過ぎ行く時にも、
憂き悩みの荒海を
渡り行く折りにも、
心安し、神によりて、安し。
(新生讃美歌515)
数多くの賛美歌の中で、この賛美歌程静けさを歌ったものはない。然し、此の最も静かな賛美歌は、大火と遭難と子供逹の死という、人生の嵐が吹き荒ぶ中で書かれた。
ホレイショ・スパッフォード(1828~88)はシカゴの弁護士で、随分成功し、資産も多かった。長老教会の会員で、ムーディとサンキーの大衆伝道に協力する霊的な信徒であった。豊かで幸福な彼の家庭に、突然、長男の死が襲い掛って来た。次には、1871年のシカゴの大火で、莫大な投資をして買っていた不動産が烏有(うゆう)に帰した。
さらなる試練は、ムーディの英国でのリヴァイヴァルに協力するため、一家は1873年、ヨーロッパ旅行に出発した際に遭遇した。スパッフォードだけは急用で残り、妻と、タネッタ、マギー、アニー、ベシーの4人の娘達は「ル・アーブル市号」で出発した。11月22日、船は英国船「ロッヘルン号」と衝突。妻は奇跡的に助かったが、子供逹は4人共溺死したのだ。
スパッフォードはすぐにその現場へと向かった。 船が遭難現場に差し掛かり「悲しみはなみのごとく」(聖歌476)押し寄せる中で、この歌は出来たという。「たとい世の終りが来て、大空は巻き去られて、地は崩るとも、復活の希望に生きる『神によるみ民は』平安」と、詞の中で告白していった(4節)。
「平安」という題の絵画に、断崖の小枝に揺れる小さな巣の中で親鳥を待っている雛の図柄がある。イエス・キリストは、世の平安を超える「霊的な平安」を弟子逹に遺された。
山中猛士(1931-2018)