「主によって召し出された民」を歌う賛美歌を求めて

新生讃美歌94「われらは主の民」

教会という言葉を聞いて、建物としての教会や制度としての教会を思い浮かべる方もおられるかもしれません。しかし原語の「エクレシア」にその本来的な意味を辿ると、それは「主によって召し出された民」であります。さて、この概念を表した賛美歌がないことを嘆いている一人のアメリカ人がいました。ヴァージニア州でバプテスト教会の牧師をしていたトマス・A・ジャクソンです。「それなら君自身がそんな賛美歌を作ればいいじゃないか」という友人の勧めに従ってジャクソンが1973年に書き上げたのが、新生讃美歌94にある「われらは主の民」です。

以前、日本バプテスト連盟壮年会連合が神学校献金のためにTシャツを作成しましたが、このTシャツは、賛美歌「われらは主の民」をイメージしてデザインされました。「教会形成を担う」ことと「伝道者養成の業に参与する」ことを願う壮年会連合は、「主に召し出された者」であることを自覚してイキイキと福音を伝え、奉仕に励もうというヴィジョンが与えられ、そんな彼らはこの賛美歌によって心が奮い立たされ、主から命じられた業にますます励むようにというメッセージを頂いて、このTシャツづくりに至ったそうです。私達を召して下さった主の招きに応えて、頂いたみ言葉と恵みを「主の民」として力を合わせて伝えていこう!その思いはまさに作詞者ジャクソンが言い表したかったことでありましょう。

ちなみに、この賛美歌は、アメリカのバプテスト賛美歌では、新生讃美歌にあるメロディーとは異なり、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1797年に作曲し現在「ドイツの歌」として知られているメロディーが付されています。恐らく新生讃美歌のメロディーよりも、ハイドンのメロディーのほうがよく知られていることでしょうから、私達もこの賛美歌をハイドンのメロディーで歌うことができます。この他にも、「87 87 D」というミーター(韻律)の賛美歌はたくさんあります(例えば、ベートーベンの第九交響曲の中の「歓喜の歌」のメロディーなど)から、ジャクソンの詞をいろいろな曲で試してみるのも面白いかもしれません。しかし新生讃美歌が載せているこのロシア民謡のメロディーは、頻繁に登場する符点のリズムが躍動感を与え、「主の召しに応えて歩んでゆこう」という熱いメッセージを力強くサポートしているのではないでしょうか? 実際アメリカでも、このロシア民謡のメロディーでこの賛美歌を歌う教会が今でも多くあります。

この賛美歌が私に語りかけていることがもう一つあります。賛美歌は数多くありますが、もし自分がみ言葉によって示されたある事柄を通して賛美したいと思っても、それに該当するものが見つからない場合もあるでしょう。「それなら君自身がそんな賛美歌を作ればいいじゃないか」とジャクソンの友人が語った言葉は、賛美歌創作が話題になってきている今日、もしかしたら私にも、あるいは皆さんにも投げかけられているのかもしれません。

新生讃美歌ニュースレター NewSong 36号(2013)山中臨在

94 われらは主の民

最近の記事
  1. 福音歌手シェーの証しと共に広まった賛美歌「キリストには替えられません」

  2. キリストにある希望を受けて

  3. キリストを歌った100節からなる長詩が歌となって 詞:キャサリン・ハンキー

  4. 「主はわたしのために、いのちを与えてくださいました。」(原詞:わたしはあなたにいのちを与えました。)との主からの呼びかけに応えて

  5. 『アンクル・トムの小屋』で著名なストウによる創作詞とメンデルスゾーンの曲で愛唱されている「朝風しずかに吹きて」

  6. 試練の中にあって書かれた賛美歌、神による平安を歌う

  7. 礼拝歌としてアメリカ3大賛美歌に数えられ愛唱されている賛美歌「まごころもて」 詞: レイ・パーマー

  8. クリスマス(待降節)はアドベント賛美歌から始まります

  9. 世界中で歌われているクリスマス賛美歌

  10. 「平和をあたえませ」と節ごとに歌う

記事一覧を表示するには、カスタム投稿「賛美歌解説」にて、4つ以上記事を作成してください。

オーディオプレイヤー
投稿が見つかりませんでした。

収録曲一覧カテゴリー

TOP